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ブックデザインを担当した話

どうも、ピースオブケイクでデザイナーやってる佐賀野です。
普段はnoteのカイゼンとかを担当していますが、この度ひょんなことから書籍の装丁を担当したので、ちょっと紹介させていただきます。

担当した書籍について

今回担当させていただいたのは、note・cakes両サービスで活躍されているバーテンダー林伸次さんの初小説「恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。」です。
幻冬舎さんから本日7月12日に発売。できたてホヤホヤです。

なにぶん本格的な商用印刷は完全に未経験だったので、四月のある日に弊社CEO加藤から

「佐賀野くん、本のデザインやってみる?」

と声をかけられた時はどうしたものかと頭を抱えましたが、無事世に送り出せたので一安心です。

ありがたいことに、今回はカバーから本文組版まで一通り担当させていただきました。なかなかのプレッシャーでしたが貴重な経験になったと思っています。

装丁について

ここからはざっくりと、どう装丁を進めていったかを解説していきます。

まずはカバーについて
書店に並ぶ際の顔となる部分。と同時に本の中身を端的に表現するものでもあるのでなるべく内容に沿う形を目指しました。
なのでデザインの方向性を決めるにあたっては、一度原稿に目を通し、読了後に自分が感じた印象を元に組み立てることにしました。

この本は分類としては恋愛小説に入りますが、長編ラブストーリーというわけでなく、バーを訪れたお客さんがそれぞれに自分のエピソードを話すオムニバス形式となっています。
また、個々のエピソードも憂鬱になるようなものはなく、スッキリした印象のものが多かったので、カバーデザインもそれに倣うようにしました。

その印象に沿っていくつかプロトタイプを作成。
関係者内で検討の結果、選択されたのは交差点を見下ろす写真を用いたものでした。

タイトルの「なにげなく始まってなにげなく終わる」の部分を交差点を行き交う人々のすれ違う様になぞらえています。

プロトタイプを元に作業を進めるわけですが、使用する写真は林さんのお店、bar bossaにちなんだものにしたかったので、お店のある渋谷区に絞って撮影することにしました。
専門のカメラマンにお願いするという手もありましたが、せっかくカメラもあることなので自分で撮影することに。
ロケーション選びに苦労しましたが、最終的に駅前のスクランブル交差点に決定。(MAGNET by SHIBUYA109の屋上から撮影。)

人口密度も高すぎず低すぎず、ちょうど良い塩梅の写真が撮れたと思っています。全体的にシャドウを青に寄せて、重い印象にならないようにしています。
また、画面中央付近に赤いコートの女性が収まっていたのは幸運でした。程よいアクセントになってくれています。

使用機材
カメラ: FUJIFILM X-T2
レンズ: XF18-55mmF2.8-4 R OIS

タイトルの方も内容の印象からあまり派手にはしたくなかったので、重い印象にならない書体をチョイスしました。漢字が筑紫明朝、ひらがながAdobeのりょう(96%に縮小)の混植になっています。
ひらがなの「く」が比較的すらっとしてすっきりとした印象になるのでこの組み合わせにしました。

(横方向の「くくも」は揃うようにした方が綺麗だったかなー、というちょっとした心残り)

本文組版について
こちらは至極堅実に。というのもこの本には章立てや見出しが全くなく、最初から最後までリニアにエピソードが並んでいる形なので、特段凝ったことはしていません。

ただ、本文は段落ごとに一行アキが入る少々変則的な構成になっているので、一般的な小説よりもかなり行間を空け、文章の粗密が大きくならないようにしました。
結果として1ページあたりの文章量が抑えられたのでサクサク読み進められるかと思います。

また、構成がちょっと単調になるので、アクセントとしてエピソードの区切りにワイングラスのアイコンを配置しました。

本文書体には游明朝を採用。内容に沿うクセのなさが選択の理由です。

謝辞

今回この仕事を進めるにあたって、多大な支援をいただくことができました。
全体的な進行を取り仕切っていただいた編集の竹村さん。ちょいちょいアドバイスをくれた弊社CEOの加藤。そして大切な初小説のデザインを任せてくださった著者の林さん。
この場にて感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。

さて最後に、この「恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。」
本日7月12日に発売です。ぜひぜひ手にとってみてください。

ではでは。


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